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「かえるごようじん」
ウイリアム・ビー 作 田中尚人 訳
セーラー出版
 カエルの魅力は、「かわいい!」だけじゃない。人によっては「嫌い!」と言ってはばからないように、「何を考えているかわからない」とか、「不気味だ」とか言われることもある。以前は、そういう人の方が多数派だったような印象もある。でも、最近は、「不気味だけどかわいい」、「“ブキュート”さが好き」という人も多いらしく、時代によって美意識は変わっていくようだ。
 この絵本『かえるごようじん』に登場するカエルは、まさに何を考えているかわからない。うっかり油断しようものなら・・・? 何でも食べちゃう。バイオレンスともいえるカエルの行動が描かれたお話は、サイケでポップな色使いのイラストレーションと独特の擬音語を駆使した言葉使いで、パンク・ロックのビートにでも乗るように読み進めることができる。
 さすがはロンドン生まれのクリエイターによる絵本である。ウィリアム・ビーは、日本では英国のファッションブランド、ポール・スミスの広告などのイラストで知られる。また、ヴィンテージ・スポーツカーのレーサー、国際的なスキーヤーとしても活躍しているそうだが、この絵本からもそのスピード感覚のようなものが伝わる。
 「カエルにキスをする」というヨーロッパの童話で語り継がれるモチーフを活かしつつ、王子さまは現れない。でも、現実のモヤモヤを抱えたとき、この絵本を開いて最終ページまでめくれば、カエルがあなたのストレスをきれいに平らげてくれるかも。
ウィリアム・ビー/ロンドン生まれ。『だから?』で2005年度イギリスBCCBブルーリボン絵本賞を受賞。現在はイギリスの田舎暮らし。『だから?』も『かえるごようじん』も田中尚人 訳。
(Blogカエルタイムズ)

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