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「T・マーヴリナのかえるの王女」
タチヤーナ・マーヴリナ 作・絵 松谷さやか 訳
ほるぷ出版
ロシアの画家、タチヤーナ・マーヴリナ(1900−1996)の絵と文章による「かえるの王女」。ストーリー自体はロシアの昔話が基になっている。ある王国の3番目の王子、イワン王子はお妃を決めるために放った弓矢をカエルが拾ったことから、不本意にもカエルと結婚するはめになる。
しかし、この“かえるの王女”は国王が3人の王子の妃たちに課す難題をことごとく最高の成果をもって応えた。この単なるカエルだと思われていたお妃は、実は頭がよすぎたために父親からカエルの皮を着ているように命じられていたのだった。
ところが、それを知らずイワン王子はそのカエルの皮を焼いてしまったことから…、と、書くと、どこかで読んだことがあると思った方もいるのではないだろうか。
同図書館にすでに収蔵している中国の民話「青がえるの騎手」と、男女が入れ替わり、ディテールの内容が異なるが基本の構成は同じ。ポイントはカエルの皮である。昔話がもつ国境を越えた地域的広がりを想像させる。
作者は1929年にロシア・アヴァンギャルドという芸術運動に加わり、1940年頃からはロシアの民衆芸術や建築遺産への関心を強めていく。第二次世界大戦以降は主に風景画と昔話の挿絵を描く仕事をするようになり、特に魔法昔話や創作メルヘンの挿絵で評価されるようになった。
ロシアの20世紀の芸術と昔話が一体となり、とても不思議な世界へと導いてくれる絵本である。

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