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「ごびらつふの独白」
詩・草野心平 絵・いちかわなつこ 編・斎藤孝
発行:ほるぷ出版 2007年3月
 福島県いわき市出身の詩人草野心平(1903−1988)は、蛙の詩人と呼ばれるほど蛙について実験的で印象的な詩を遺している。
 そのひとつに「ごびらつふの独白」がある。ごびらつふとは、独白できるほど、蛙のなかでも意識のひじょうに高い蛙らしい。その「独白」の出だしはこうだ。
 るてえる びる もれとりり がいく
 ぐう であとびん むはありんく るてえる。
 いくらカエル好きでも、この実験的難解さに、“本当にすぐれたカエル”になるには、まだまだ修業が足りないのかもと思えてくる。
 ただし、ありがたいことにこの詩には、心平自身による日本語訳がついている。出だしの独白の意味は、「幸福といふものはたわいなくつていいものだ。おれはいま土のなかの靄(もや)のやうな幸福につつまれてゐる」となる。
 大切なのは、「りりん てる。(素直なこと)」「ぼろびいろ てる。(夢を見ること)」
 この絵本は、そんな、草野心平の「ごびらつふの独白」に絵本作家のいちかわなつこが絵をつけている。日本語の本を声を出して読むことを推奨している斎藤孝の編による一冊。
 確かにこの本は、一度日本語訳なしに蛙の言葉として声に出して読んでみるといい。自分なりの発見があり、カエルの気持ちに少しでも近づけるような気がする。
 そうして心平が感じとった意味を改めて読んでみると、いま私たちが地球の先輩である蛙から、何を学ぶべきかが見えてくるだろう。
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