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「かえるよ!カエル」
アトリエ モレリ 作・絵 久居宣夫 監修
リブリオ出版
カエルの図鑑やカエルの生態に関する本はたくさん出版されていて、そのなかには飼育についてのページを設けているものもよく見ることがある。でも、この本のようにヒキガエル(アズマヒキガエル)を、その産卵場所に行って卵をとるところから子ガエルになるまで、そしてその後と、カエルの一生につき合うように観察し、リアルに表現したイラストでわかりやすく解説している本は少ないのではないだろうか。
確かにカエルといっても種類はいろいろで、飼い方も微妙に違うところがあるのだろう。そして、この本で対象となっているアズマヒキガエルを含むヒキガエルの仲間は、カエルの好き嫌いを分ける要になっている種類とも言える。成体になってからは民家の庭に住み着くこともあるが、見かけるその姿にギョッとして苦手になる人も多いようだ。
しかし、この本を読んで、大昔、生き物が水の中から上陸するに至った過程を「カエルの卵―オタマジャクシーカエル」でたどり、ヒキガエルにはヒキガエルならではの生き方の苦労があることを知ると、その独特の風貌にも意味があることを感じ、かっこよくさえ見えてくる。
特にオタマジャクシがえら呼吸から肺呼吸に変わる段階では、尾が短くなるのに足が完成していないのでうまく泳げずおぼれることもあるらしく、すべての生命はそうした危険を乗り越えて進化して独自の形態をもってきたことをカエルがおしえてくれる。
実際に飼わなくてもこの一冊でヒキガエルに生物としての共感がもて、ヒキガエルを好きになることができるかもしれない。

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