福島県建設業協会の広報誌に昭和30年に掲載された高山弥一の「ガマのコレクション」の記事を紹介します。
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「精神的安楽が何よりだ。いくら金があっても精神的に不安定ではどうにもならん。そりゃーわしだって借金はある、でも借りた金は必ず返すという気持ちがあれば一生懸命働くだろうし、安定もする。金というものは不正さえすればいくらだってたまる。
しかしそれでは精神的に安定ではないから長生きも出来ん。総理大臣なんてさぞかし金があっていいだろうと思うだろうが、あれでなかなか大変だと思うな。」
高山さんがお客様と話しておられたのが、これだ。記者が「かえる」の事について聞くと・・・・・・・。
「あなた伊勢参りにいった事があるか?ある。それでは二見ヶ浦にいっただろうそこに大きなガマが口から水をふいていたのを見たかネ。気がつかなかった?
旅行をする時地理と歴史を知らないで歩いたのではしょうがないナー。このガマはですな『サルタ彦ノ尊』のおつかいものなんです。神話を見ますとですな天照大神が天下りしてきた時、このサルタ彦が先頭をしてあらゆる悪魔を追払ったといういわれがあるんです。そのお使いが『がま』だから縁起がいいわけです」
会津という所はどういうわけか方位方角を気にする人が一ぱいいる。せっかく家を建てようとしても壁土は北からもってきてはいけないとか、便所は西向きがいけないとか、高山さんのように建設を職業とする人にはまったく困った事である。それで高山さんはあらゆる悪魔を払うというサルタ彦の掛図を伊勢まで行って買い『がま』を信仰する様になった。
「この『かえる』は『帰る』というので戦争に行く人がわしのところからお守りとして持っていったもんです。皆んな帰ってきましたョ。『かわず』は『買わず』にもあたるでしょう。よけいな物は一切買わないという意味です。」
おどりをしているカエル、思わず吹き出したくなるカエル、菓子器も、湯わかしもカエルが彫ってある。
高山さんの話しは実におもしろい。喜多方で一番早くカメラを買ったのが高山さんだったと言う。いまもすばらしいカメラを持って反対に記者がとられた。いやはやまったくもってかなわない。
庭には牡丹が美しく咲いていたが、カエルは朝の光をいっぱいうけてならんでいたが、オジイさん?の話しはそれにもましておもしろかったが・・・・・・。
カエル(帰る)を忘れては失礼、帰るとしよう。(M記者)
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