book image
「蛙たちが死んだ夏」
デブラ・パークス 古屋美登里 訳
筑摩書房
著者は1962年生まれで、この短編作品は85年に発表された彼女のデビュー作である。当時彼女は23歳で、アイオワ大学の創作科の学生だった。日本でもベビーブーマー(団塊の世代)の後に登場した世代(1960年前後の生まれ)の文学の担い手たちは、「大きな物語」が終わった後の「小さな物語」、つまり身近な日常を淡々と、そして瑞々しく綴る小説を書く傾向があった。アメリカの文学界も同様だったようだ。デブラ・スパークスもそんな世代の特徴をもつ作家の一人だろう。実際、作家としてだけでなく研究者としても文学に関わっている彼女は、80年代に同世代の作家たちの作品だけを集めたアンソロジーを編集したこともあった。そんな彼女のこの作品は「蛙たちが死んだその夏は何も実らなかった。」という一文で始まる。少女から大人になる不安定な時期の感情を綴った短編だが、蛙の死が絡むことで寓話性を暗示させる作品になっている。
(カエルタイムズ9号より)

Copy(C)2011 K&K Ltd.All rights reserved