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「青がえるの騎手」
編集 斎藤公子 絵 チエルシノヴァ
創風社
  中国民話をもとに編集されているだけに、この絵本からはその特徴をいくつか拾い上げることができる。
  ひとつは冒頭で老夫婦に思いがけなく子どもが授かること。日本の昔話の「竹取物語」や「桃太郎」の導入にも見られるが、中国の影響とも考えられるポイントである。
  この本の物語で生まれた子どもはなんとカエルで、しかも言葉を喋る。そして、ある日、大胆にも長者の娘をお嫁さんにもらってくると言って、旅立つ。
 長者の家ではほとんど門前払いの扱いを受けるのだが、カエルはひるまない。娘さん(長者には3人の娘がいる)をお嫁にもらえないなら「笑いますよ」とか、「泣きますよ」とか、はたまた「飛び跳ねますよ」と言って迫る。カエルがそんなことをしても痛くも痒くもないと思ったら大間違い。長者の家は地震や洪水に見舞われて大変なことに。このあたりは、中国神話でカエルは「雷神の息子(もしくは娘)」とされていることに由来するのかもしれない。
  そしてこのカエルは、表紙の絵からも想像できるように、その正体はいわば“イケメン”の騎手。しかし、人間として生きるための本当の力がつくまでは妻(長者の3番目の娘)にも正体を明かさず「カエルの皮」着ていなければならなかったのだ。
  ところが、その大切な「カエルの皮」が妻によって燃やされてしまって……。
  中国神話ではこの「カエルの皮」というものもとても重要な意味をもっている。部族によっては「大地はカエルの皮でできている」と考える地域もあるようだ。
  編者は多数の保育論の著書をもつ斎藤公子氏。中国民話のエッセンスや構成を活かしたストーリーに、最後は現代の日本の子どもたちにもためになるようなメッセージを込めている。
  ロシア出身のT・チエルシノヴァによる水墨画タッチの絵の自由な筆づかいの挿絵も清々しい1冊である。

 参考文献:『中国の伝承曼荼羅』(百田弥栄子著 三弥井書店発行)

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